KODAK EKTRA

私がKODAK EKTRAを最初に知ったのは、高校生のときに初めて自分で買った
CONTAX RTS（中古）の購入時にミヤマ商会でもらった？アサヒペンタックス発行の
小冊子（ミラーイメージ？）の中村氏の記事だった。
そのときは「世の中には凄いカメラがあるのだな」と思っただけだったが、社会人になり
田中長徳氏の「銘機礼賛」を読んだことと、それをきっかけにアルパ研究会に参加して
実物を譲ってもらうことで夢を果たした。
　
コダック・エクトラはアメリカのイーストマン・コダックが総力を傾注して開発した
35mmレンジファインダーカメラである。
製造期間は1941年に始まり、WWIIを挟んで1947年に生産中止となった。
エクトラが「左利きの設計者により操作系が左にある」とよく言われるが、
クラ専No.63の永田氏の記事によると、設計者のショセフ・ミハリ氏の意図は
「利き腕（右手）＝強い手による保持こそブレのない写真撮影」という
人間工学的思考によるものである、ということを後で知った。
他にもマガジン交換可能、ズームファインダーで焦点距離50～254mmに対応、
パララックス補正基線長104.8mmＸ倍率1.6倍の距離計、視度補正ありなど
当時のレベルを大きく超えたハイスペック機であった。
レンズも６種類のエクターレンズがあり、カラーフィルムに対応していた。
アクセサリ類もユニークなもの（アングルファインダー、近接撮影用フィアンダやバック）
もあってあらゆる撮影条件に対応していた。

参考文献：
クラシックカメラ専科 No.25 クラシックカメラの使い方　朝日ソノラマ発行
クラシックカメラ専科 No.63 ライカブック'02　　朝日ソノラマ発行

１．カメラボディとレンズ

エクトラで最も多い組合せのEktar50F1.9を装着。
どっしりとした重厚な姿であるが、実際に計量してみる。
・ボディ＋レンズ：1,095g
・ボディのみ　：750g
・マガジンのみ　：278g
標準レンズ装着という「普通の使い方」でも1kg超えなので、交換レンズ持参で
撮影に出るとかなり腰に来るカメラである（遠い目）

内蔵のズームファインダーは50mm～254mmに対応している。
Ektar35F3.3のファインダーはメーカーでは「ボディ内臓のファインダー正面に付ける
アタッチメント」を用意しているが、現代では入手は難しい。
自作でアタッチメントを作ってみたものの、結局は外付けファインダーを
使用するのが使いやすい（ありがち）

後姿。
左側の巻上ﾚﾊﾞｰが特徴的。
ﾌｧｲﾝﾀﾞｰは上部右側の方で、左側はｽﾌﾟﾘｯﾄ式の距離計。
巻き上げ時にフィルムがしっかりと送られているかどうかは、右側の赤ﾎﾟﾁが動いているか
どうかを目視or親指の感触により確認します。

マガジンの蓋を開けたところ。
このように広く開くのでフィルム装填は楽です。
フィルムの送りの方向が一般的なカメラとは逆。
マガジン下にあるロットと巻き上げレバーの巧みな連動により、ワンタッチで巻き上げ動作を
行うことが出来ます。

上部からの姿。
左側にｼｬｯﾀｰﾀﾞｲﾔﾙ（中間速度なし）とレリーズ、次がｾﾙﾌﾀｲﾏｰ、ﾌｨﾙﾑｶｳﾝﾀｰ、ｽﾞｰﾑﾌｧｲﾝﾀﾞｰの
距離切り替え、距離計の視度補正の順番。

ｼｬｯﾀｰ速度設定は以下の方法で行う。
・高速側は1/1000～1/25でノブを持ち上げてセットする
・低速側は上画像の上方にあるダイヤルで1/25～１、Ｂに設定
　=>高速側は1/25にセットしておく
　=>高速側を正しくセットしなくてもガバナーが動作してしまうので注意！
使用中に最も注意が必要なのは、「必ず巻き上げてから」行うことである。
=>巻き上げるとボディ中央部（セルフのレバーの右側）の窓の表示が
　赤=>黒になる
巻き上げずに高速ダイヤルを回してしまうと、シャッター幕がグチャっとなり
最悪の場合は壊れる（修理が必要）ので注意が必要である。

エクトラの交換レンズ。
メーカーで実際に販売されたものは90F3.5～153F4.5の６種類であるが
私は135F3.8までの５本を所有している。

エクトラのファインダーがどんな風に見えるのか？

これがファインダー像。
明るいところではもうちょっとクッキリと見えるが、「古井戸の深い底を覗き込んだような感じ」
なのはクラカメあるある？
ズームファインダーの焦点距離を変えるときに接眼部のレンズが調整可能なので
慣れると特に不満はない。

距離計はアメリカのカメラでは標準亭？なスプリット式である。
見栄具合は悪くないのだが、被写体の種類（縦に切れるような見え方のものでない場合）
によっては判別が難しい。
=>桜や紅葉などの「細かい葉っぱがいっぱいあるようなものはちょっとしんどい
基線長が長く、それに倍率をかけているので使い方はちょっとコツが必要である。
視度補正をうまく使えば良く見えるので、254mm（があったとして）でも対応可能だった
と思われる。

Ektar50F1.9　F=1:2.8

Ektar135F3.8　絞り開放

ブログ掲載記事：

KODAK Ektraの話(1)　
KODAK Ektraの話(2)　
KODAK Ektraの話(3)　
Ektar35F3.3　
Ektar90F3.5　
Ektra-NEXアダプタ　
 実はエクトラ用ではないEktar50F1.9　
KODAK Ektraと蒼い空　
 猛暑の中でエクトラで撮影　
 KODAK Ektraで紅葉撮影　

２．アクセサリー類

（１）接写用フィルムバック

表側

裏側

なんとなくエクトラ用のものだとは判りますが・・・

マガジンバックを外して交換してみる。

これはなんと！マクロ撮影をするためのピントグラスである（通常使用）

レバー操作をすると

ミラーが跳ね上がって、ウェストレベルで使用出来る。

これはコダックエクトラのマニュアル（1941年）である。
驚いたことに、日本と開戦の年に一部とはいえカラー印刷である。
エクトラは、「いきなりシステムカメラ」で登場した。
そのマニュアルには、え？と思うものもあるが、マガジン交換が出来る
メリットを生かした接写装置（マニュアル中下段左側）がある。
この手のアクセサリーの入手は難しいが、こうして手に取って確認出来る
ことは楽しい。

３．デジタル撮影用のマウントアダプタ